日本酒の蔵元に古くから伝わるエピソードとして「のた坊主」というのがあります。
のた坊主とは、古狸が坊主に化けたもので、蔵に新酒が出来上がると、
どこからともなくのた坊主がやってきて、蔵の中の樽に入った新酒を飲み、
やがて酔っ払うとのたのたと去っていく(だから「のた坊主」)というもの。
しかし、せっかく作った新酒を盗み飲みされては蔵元はたまりません。
そんなあるとき、新酒を盗み飲みしていたのた坊主は蔵人たちに取り囲まれます。
しかし、この坊主は「申し訳ありません。じつは自分はそこの洞穴に住んでいる狸でして、
そこには子狸が数匹待っています。もう悪さはしないのでどうか許してください。」
と嘆願します。かわいそうに思った蔵人たちはのた坊主を見逃してやります。
それ以来、のた坊主は酒を盗み飲みに来なくなり、その蔵からできる酒はそれまで以上に美味しい
酒ができ、大繁盛するようになったという言い伝えです。